2024年 春学期活動報告 - 音を聴くということ - Yuian Maki
「きく」という言葉にはたくさんの漢字があることを知っていますか?
「きく」という言葉には、日本語において二つの主要な漢字が存在し、それぞれ異なる意味合いを持ちます。これらの漢字を使い分けることで、音に対する異なるアプローチや感覚が表現されます。
一つは「聞く」です。この漢字は、自然に耳に入ってくる音や声を指します。例えば、「物音を聞く」や「話し声が聞こえる」といった表現で使用されます。ここでは、音や声が特に意識的に注意を向けることなく、自然に耳に入るという意味合いがあります。音がどのようにして私たちの感覚に影響を与えるかについての基本的な理解を示しており、私たちの周囲の環境が音を通じてどのように知覚されるかを説明します。
もう一つの漢字は「聴く」です。この表記は、音楽や講義など、意識的に耳を傾ける場合に使われます。例えば、「音楽を聴く」や「講義を聴く」、「国民の声を聴く」といった表現で見られます。「聴く」は、ただ単に音が耳に入るのではなく、積極的にその音に注意を払い、理解しようとする姿勢を示します。ここでは、音に対する意識的な関与や深い理解が求められます。
今学期の振り返りとして、森や自然の中で音を聞くことがストレス解消につながるという「ハイパーソニック・エフェクト」について考察をしました。ハイパーソニック・エフェクトとは、人間が通常聞こえない超高周波音が、身体的および心理的な反応に影響を与える現象です。脳科学者で作曲家の大橋力氏が発見したこの現象によれば、森の中には人間の耳には聞こえない高周波音が存在し、これは皮膚を通じて感知されるとされています。この超高周波音はストレスを軽減し、免疫力を高め、心の豊かさを育む効果があるとされています。特に、生態系が豊かな熱帯雨林のアマゾンや伊勢神宮の森で、高い数値で観測されていることが示されています。この研究を通して、自然の中で音を「サンプリング」をしました。自然の音を録音する際、その音が本来の自然の一部であるという感覚が損なわれる可能性があるため、録音のタイミングや方法に配慮が必要です。自然に溶け込んでから録音を始めることで、より本物に近い音を収録することができると考えられます。
ムーショットプロジェクトを通じて、内的な音(inner sound)についても考えるようになりました。このプロジェクトは、人間の身体が持つ制約を超えて、新しい状況や環境に適応するための技術的基盤を確立することを目的としています。「CA(身体拡張)」という新たな身体の概念を通じて、個々の身体の限界を超え、協力して新たな経験や技能を創り上げることが期待されています。このプロジェクトは、身体の枠を超えてどのように新しい世界を構築するかという問いを投げかけています。
来学期に挑戦したいこととして、自分自身の楽器を創りたいと考えています。具体的には、茶室のような静謐な空間を作り、その中でヘッドホンを使用して音を楽しむ体験を設計したいと考えています。また、ベルのような楽器を制作することにも興味があります。例えば、「LinNe Chibi特製おりん」のような、佐波理という銅と錫の合金を使用した楽器の制作に関心があります。佐波理の音色は澄んだ美しい響きを持ち、魔を払う力があるとされています。
言葉の使い分けから始まり、自然音の効果、技術の進歩、そして自己表現の新たな挑戦についての洞察をしました。音とその感覚がどのように私たちの生活に影響を与え、どのように新しい経験を創造するかについて、さらに考えていきたいです。
Author
Yuian Maki