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2023年 春学期活動報告 - 音環境と時間経過に伴い変化し続ける作品としての「音を記憶する樹」の制作 - Riki Saito

2023-08-04

2023年 春学期活動報告 - 音環境と時間経過に伴い変化し続ける作品としての「音を記憶する樹」の制作 - Riki Saito

研究活動2期目

(この春学期、進捗ごとに更新していた以下のnotionにもこの作品の制作にあたる思考錯誤や細かい実装の進め方をまとめています!)

https://www.notion.so/Riki-Saito-7f9543a86c4e49cebe1c8059c2a676cd?pvs=4

研究概要

私が行う作曲等の創作行為の意義は、その作品が私の生きた証となって、現実世界やYoutubeのようなネット上のプラットフォームなどの然る場において存在し続ける限り、肉体的死を超えて自分の存在を残し続けることができるところにある。そしてそのような「自分の存在証明」として残されて欲しい作品の姿として、絵画や彫刻作品が風化したり色褪せたりするような、時間経過や環境の影響を受けて動的に変化する様は、環境や生物学的要因(老いや遺伝)によって人の姿や感情が変化するように「生き続けている」ようで美しいと感じる。音楽の記憶媒体において考えてみると、レコードやカセットテープといった物理的性質を活用した媒体は前述したような時間経過や環境の影響を受けて変化し続ける、「生き続けている」音の姿といえるが、昨今の音の記憶媒体は前述したような時間経過や環境の影響による変化を便宜上排除するため電子データ化されたものが多く扱われる。本研究では、絵画や彫刻、レコードやカセットテープの性質に倣い、音環境と時間経過の影響により姿や記録したものが変化していく作品の制作を通し、「生き続ける」作品という私にとっての美を追求する。また、風化した作品を鑑賞して歴史や年季を感じるように、作品の姿からその作品が記憶してきた音環境と時間経過の広がりを想起できるような表現を模索する。

背景

研究概要に述べたような性質を持つ作品を制作する中で、私は樹の性質に着目した。樹は、根を張った場所に何十年単位という長い時間佇み続け、気温、空気や地面の湿度、光の当たり方、地面に含まれる養分、養分を共用する他の生物や植物といったその場所の環境の影響を、樹自身の持つ生物学的なアルゴリズムと掛け合わせて、成長してきている。つまり、今森や山、道端で見える樹の姿はその樹が今まで受けてきた環境を包含し続けた成果物であり、今もなお現在の環境を樹自身の遺伝的・生物学的特性に影響させながら、動的に変化し続けている。この性質は、述べたような私の追求したい美そのものであると感じ、今回の制作では樹をモチーフとすることとした。そして、制作する樹の生命のアルゴリズムをプログラムによって私が構築することにより、この作品が音環境及び時間経過を包含し続け、それを私の構築したアルゴリズムと掛け合わせることで、この作品の私の存在証明としての意味合いを強められるのではないかと考えた。

目的

私が構築した生命のアルゴリズムを模したプログラムの元,音を環境として成長し,発芽して以来の音を記憶していくような樹を制作する.

(x-Music Lab 23春) 音環境と時間経過に伴い変化し続ける作品としての「音を記憶する樹」の制作

実装

音環境の取得はAbleton Live、音の分析(FFT)はMax for Live、樹のプログラムはUnityで実装した。Ableton Live及びMax for Liveの処理はMacbook上で、Unityの処理はデスクトップPC上で行い、Max for Liveから送られる音環境の情報はOSCを用いてUnityに送信する。

(x-Music Lab 23春) 音環境と時間経過に伴い変化し続ける作品としての「音を記憶する樹」の制作

システム

入力された音環境は音量、パン、周波数(高音域・中音域・低音域)でそれぞれ数値化され、樹の成長の各パラメーターに影響を及ぼす。乱数を一切使わず、全ての数値の操作を音環境の情報に依存させ、その音環境ならではの樹の特性を確立させる。

(x-Music Lab 23春) 音環境と時間経過に伴い変化し続ける作品としての「音を記憶する樹」の制作

今後の展望

3D実装,XR実装

樹を仮想現実空間の中で育てることで、さらに樹の姿からその樹が記憶してきた音環境や時間経過の広がりを想起させるための表現を深める。

設置型(βドームで行った形式)

森の中、キャンパスの中、街中など、さまざまな場所に設置してその場所の音環境を記憶して樹が育つ様を観察する。人がいるところに展示することにより、その樹と、音環境の発生元となる人々との関わり合いに新たな現象を見出す。

スタンドアローン化

初めて起動したタイミングから永遠に音環境を拾っていき、樹が育っていくプロダクト。

ライブパフォーマンスのビジュアル

ライブパフォーマンスによりリアルタイムに発生した音楽を樹のビジュアルで記録する。完成した樹に、演奏当時の音環境を想起させる効果を見込める。

取得できる音の要素の追加

今回は周波数の値を高音域・中音域・低音域に分類して音情報として扱ったが、細かい周波数の値を活用する。また、瞬間的な音の情報のみならず、その値の時間的な変遷もMIR(Music Information Retrieval)による特徴量抽出などを用いて活用することにより、さらに音色のビジュアライズを鮮明なものにする。

Author

Riki Saito